日暮れの音

梅雨と猫と犬と結婚と読書

 梅雨時期の雨はなぜか、その他の季節に比べて心地の良い音がする。湿気が多く蒸した空気は体に疲労をため込む原因になるけれど、どんよりした不穏な曇り空から雨粒が落ちだすと、ぬるい風が時折気まぐれに入ってくるだけだった窓から、それまでよりほんの少し涼しい風が入ってくる。私は庭に住み着いた猫が登ってくるせいで穴だらけになった網戸の前で、銭湯で湯上りのおじさんが扇風機の前に立って全身で風を受けるようにその風を全身に受ける。降り始めは不規則だった雨音も雨の勢いが定まると次第に一定の秩序を持ち始める。屋根や庭や道は雨に打たれて様々に音を立てる。これは鳴っているのではない、鳴らしているのだ、そう思うくらいにそれらはお互いの出すべき音をわきまえている。雨がまたしばらくの間降り続くと地面のくぼみに水たまりが出来始め、それはまた雨音の音色を豊かにする。

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 最近、庭に新顔の猫がやってきて住み着いている。尻尾をひどく怪我していて、やって来てから二ヶ月ほどは経つというのにまだ治っていない。あまりにもひどい怪我なので、もしかしたらよくならないのかもしれない。痛々しいが、やってきた頃より体がふっくらしてきたので、そこだけは良い兆候である。

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 デュークは一ヶ月前に肺炎で入院した。病院に連れていくと誤嚥性肺炎という食べたものが気管の方へいってしまいかかってしまう病気と言われ、48時間以内に回復に向かわなければ危ない、とその日はそのまま入院となった。気がきではなかったけれどなんとか回復し帰ってきた。しかし落ち着いたかと思えば先日嘔吐が続くので夜半病院に行き診察してもらったら嘔吐の原因は不明だが、また肺炎にかかっていると言われ、再び入院となった。現在、帰ってきてここ数日は落ち着いている様子。ソファーでよく寝ている。

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 一週間前に結婚したけれど、生活は何も変わらない。左手の指輪に常に違和感があって外したくなるけれど、指の節が太いせいで簡単に外せないし、付けられない。

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 中村元さんの著作を読む。『ゴータマ・ブッダ―釈尊伝』、『龍樹』。ブッダが生きていた時代のこと、大乗仏教が成立していく過程がとても解りやすく書かれている。「空」の思想はやや難解だけれど。